Food in Ireland ① 〜食べ物をカクホする〜

二〇〇六年夏から約一年間、イギリスに留学していました。
大学三年生の時です。
イギリスといってもロンドンのような都会ではなく、ロンドンのあるグレートブリテン島の西の島、アイルランド島のイギリス領、北アイルランドへ行っていました。
なぜそんな辺鄙なところを留学先に選んだのか、それはとにかく田舎でのどかなところに行きたかったからです。
地域の面積は四国より一回り小さく、人口は神戸市を少し上回るほど。少し街をはずれれば、一面に牧場の緑が広がるようなそんなところです。
面積は小さく、人口も少ないのですが、日本よりずっと広々と感じて、人々も穏やかでのんびり暮らしている場所でした。
英語もものすごく訛っており、日本で言うと青森弁を聞いている感じです。
私は日本の大学で栄養学を学んでいたのですが、北アイルランドでも栄養学を学ばせていただきました。
さらに世界各国から留学生が来ており、彼らと交流することもできました。
このコラムでは、私が北アイルランドで経験したことを、食に関することを中心にしてお届けできればと思います。


さて、初回は私の留学初日のことを書きたいと思います。
大学の寮に住むことになっていた私は、大学に到着した初日、大学のスタッフに自分の寮まで案内されました。
ひと通り寮の説明を終えるとスタッフは帰っていきます。
時間は既に夕方で、朝食以来何も食べていなかった私は、長旅の疲れもあり、ひどくお腹が空いていました。
しかし、自分で何も食べ物を持っていませんし、寮の中にも食べ物がありません。
しかもその寮には私以外誰もいませんでした。
大学の中に売店などないかと探しに行ったのですが、夏休み中ということもあり、既に閉まっていました。
ここは北アイルランド
近くにコンビニなどありません。
後でわかったのですが、最近二四時間のコンビニができて、そこまで徒歩三〇分かかるのです。
どうしようもないので、私は寮の自分の部屋に戻り、ベッドで眠ることにしました。
翌朝、空腹に耐え切れず、早くに目が覚めた私は、八時に大学内の売店へ向かいいました。
店の中にあるスコーンが目に入り、迷わず店の中に足を踏み入れると、「NO!」と、すかさず太った女性の店員に大声で怒鳴られました。
女性が指差す先の張り紙を見ると、店が開くのは九時。
「OK…」とつぶやき、外のベンチで開店まで待つことにしました。
オープンと同時に店に駆け込み、サンドイッチやらスコーンやらを買い込み、寮に戻ってガツガツ食べました。
近くにコンビニがない北アイルランドでは、食糧は常に確保しておくものであり、それを怠ると飢え死にしてしまうものだということを初日に学びました。
いつでも食べ物を手に入れることができる日本は本当に恵まれているということを実感しました。