『アルケミスト』パウロ・コエーリョ

少年が宝物を求めて旅をする物語です。

本田健さんの『20代にしておきたい17のこと』の中で紹介されていたので、気になって読んでみました。

夢と勇気の物語で、途中何箇所も素晴らしい言葉を見つけたり、物語全体を通して勇気をもらえました。

ネタバレしない範囲で気に入ったところを紹介してみようと思います。




幸福の秘密とは、世界のすべてのすばらしさを味わい、しかもスプーンの油のことを忘れないことだよ(P.40)

ある賢者が主人公の少年にあることをやるように言われます。

それは、「二滴の油が入ったティー・スプーンを持って、その油をこぼさないように広い宮殿を2時間かけて探検してこい」というもの。

少年は、言われた通り、油をこぼさないように注意しながら、宮殿を回ります。

そして2時間後に賢者のもとに戻った時、賢者は宮殿の中の様子はどうだったかを質問します。

宮殿の中には、ペルシャ製のつづれにしきがかかっていたり、庭師が10年かけて作った庭園があったり、図書館には美しい羊皮紙が置かれてあったりするのです。

しかし、少年はただスプーンの油をこぼさないようにという一点に集中しており、宮殿の美しさなど気にしている余裕がなかったのです。

そこで賢者は少年にもう一度宮殿の中を見てくるように言います。

そして少年は今度は天井や壁に飾られた芸術品をじっくりと鑑賞するのです。

賢者のところへ戻ってきた少年は、その装飾の素晴らしさを熱く語ります。

しかし、そんな少年に賢者はこう言います。

「ところでわしが預けた油はどこにあるのだ?」

少年は自分が持っていたスプーンを見ると、油はなくなってしまっていたのです。

そしてそこで賢者が少年に言ったセリフが冒頭のセリフです。

「世界のすばらしさを味わうこと」と「スプーンの油のことを忘れないこと」。

これは夢を追うことに対応する比喩だという考え方が、一つできると思います。

スプーンの油がこぼれないようにする、これは仕事をがんばって、日々の生活を成り立たせるということ。

そして世界のすばらしさを味わうことが、自分の夢の実現を目指すことです。

油がこぼれないように…それだけに集中していては世界のすばらしさに目を向けることはできません。

つまり、日々の仕事に追われて他のことを考える余裕がなくなれば、夢をみることの素晴らしさを知ることなく人生を終えてしまうのです。

しかし、世界の素晴らしさに目を奪われて、スプーンの油のことを忘れていると、油がなくなってしまい、生活できなくなってしまいます。

ここのところのバランスがとても大切なのだと思います。

油をこぼさないことは大前提。でも世界の素晴らしさも楽しみたいよね。

しかし、そのためには人一倍の努力が求められます。

ある意味では油をこぼさないように注意するか、世界の素晴らしさを堪能するか、どちらかだけやっている方が楽なのかもしれません。

でもそれは目指すところではなくて、両方うまく追求するのがベストの選択です。

そのためには定期的に自分を振り返ったり、自分の思考をチェックすることが大事なのだと思います。

その二つのバランスをうまく取りながら、世界の素晴らしさを堪能する人生を送りたいですね。


アルケミスト 夢を旅した少年 (角川文庫)

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