日本の食料自給率40%のウソ
日本は他の先進国に比べて食料自給率が低いと言われています。
日本の自給率は40%(2009年)です。では、この自給率とは何でしょうか?
一口に「自給率」といっても何種類かあるのですが、この40%という数字は、「カロリーベース自給率」と呼ばれるものです。
カロリーベース自給率とは、日本人一人に一日あたり供給されるカロリーのうち、国産でまかなっているカロリーの割合です。
しかし、この数字にはいくつか問題と思われる点があります。
ここでは主に3つ紹介しましょう。
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まず1つ目が、畜産物に関してです。
畜産物、たとえば牛肉や豚肉を考えてもらえばいいかと思います。
その牛が日本で生まれ育ったものであったとしても、飼料つまりエサが国産であるかが問題になるのです。
畜産物の場合は、そのものの自給率に飼料の自給率をかけて算出されます。
エサに輸入したものを使うと、いくら生まれた時から手塩にかけて立派な牛に育てたとしても、その牛の自給率は100%として反映されないのです。
エサが国産であろうと外国産であろうと、国内で畜産農家が一生懸命飼育していることに変わりはないのですが、その努力は数字には表れません。
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2つ目は、「カロリーベース」という点です。
この自給率は、その食品が占めるカロリーの割合です。
食生活において重要な野菜やきのこというのは、油や肉類に比べてカロリーはものすごく低いです。
つまり、いくらにんじんやしいたけを国産でがんばったとしても、油や肉が輸入品であれば、それらの数字が大きく反映されることになります。
よって、野菜やきのこの自給率というのも自給率の数字には反映されにくくなってしまっているのです。
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最後に、この自給率は供給エネルギーが分母になっているということです。
しかし、皆さんもご存知の通り、日本では食べ物が余るということが起きています。
毎日たくさんの食べ物が廃棄されているのです。
カロリーベースの自給率は、「供給された」エネルギーを分母にして計算しているので、廃棄された分もひっくるめた上での供給エネルギーがもとにされています。
つまり、要らない分、廃棄されている分を減らせば、自ずと自給率は上がると考えられるのです。
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このように、現在使われている自給率にはいくつかの問題があります。
一部には「農水省が、自給率を小さく見せて国内生産が危機であると演出し、予算確保に利用している」という批判もあります。
また、自給率を上げるのはいいことばかりなように思えるかもしれませんが、実はそうではありません。
日本の農業は、生産者が高齢化したこともあり、機械やトラックを多く用いているのですが、農地の規模が小さいため、効率的に使えていないのです。
つまり、エネルギー効率が悪く、外国の農業に比べて生産量あたりたくさんの燃料が使われています。
このような状況の中で無理に自給率を上げようとすると、燃料が無駄に消費されてしまい、エコとは真逆のことになってしまいます。
よって、まずは農業形態を整える方が先決です。
それと同時に重要なのが廃棄を減らすこと。
消費できないだけの食料を輸入する必要はありません。
まずはそういった取り組むべきところから取り組んでいかないと問題の本質が見えてこないのだと思います。
◆参考文献 「栄養と料理」 食の安全を読みとく41 松永和紀