危険を冒してまで食べますか?

某焼肉チェーン店においてユッケが原因とみられる食中毒が発生し、3つの県にわたり57人の患者が確認されました(5月3日現在)。

そして2名の男児の命が失われました。

今回の事件は生肉を食べることのリスクを考えるいい機会だと思うので、情報をまとめていこうと思います。


ユッケ

生肉を用いた韓国の肉料理。牛肉を用いるが、日本ではアレンジ料理として鶏肉やマグロを使う場合もある。
今回の食中毒の原因とされているユッケはどうやら牛肉のようです。

症状

原因菌は腸管出血性大腸菌O111とされています。
この菌が出す毒素が原因で溶血性尿毒症症候群(HUS)という症状が引き起こされます。
HUSは毒素が血液に入り、全身の細胞を侵す病気で、特に脳や腎臓、赤血球にダメージを与えます。
最悪の場合、神経障害を起こし、脳症で死亡します。
今回の事件では男児2人がこの症状により死亡したと考えられ、また重症になっている数十名の患者もこれにかかっているのではないかと思われます。
助かったとしても腎臓の機能が損傷を受けたりして重篤な後遺症が残るケースも少なくありません。

生食用食肉の衛生基準

問題を起こした会社の社長の会見はひどいものでしたが、その中で「国内での生食用の牛肉の出荷実績はない」「生食以外の肉を生食として出すことを禁止すべきだ」という発言がありました。
生食用の食肉に関しては、厚生労働省が出した「生食用食肉等の安全性確保について」という通知があります。
この通知で生食用食肉の衛生基準が示されているのですが、出荷実績があるのは馬肉とレバーだけです。
つまり、社長の発言通り、生食用として出回っている牛肉はないということです(輸入肉で少しはあるようですが)。
それと、少し横道にそれますが、鶏肉に関しては衛生基準が示されていません。
これは鶏肉は生食で提供されることが想定されていないということで、鶏肉の生食の危険さがうかがえますね。
また、この通知はあくまでも指導方針としての位置づけで罰則規定もありません。
しかし、問題の会社の「もし法令上の罰則があれば、ユッケを780円で売ることや、販売自体を取りやめる判断をしたかもしれない」という発言は到底受け入れられるものではありませんね。

原因は何だったのか

原因は2パターン考えられます。
1つめは、そもそも仕入れた肉そのものが汚染されていたというケース。
2つめが、店における加工の時点で菌が付着、増殖したというケース。
これは行政の捜査の結果を待つしかありませんが、2つめの可能性が高いと思います。
記事によると、問題の店はユッケや調理室の細菌検査を2年間も怠っていたというのです。
いくら新鮮な肉を仕入れたところで、調理の段階で菌をつけてしまっては意味がありません。
例えば器に盛る箸を使い回すことひとつとっても危険なことです。
一事が万事で、細菌検査を2年間もしていない店がどういう衛生管理をしていたのかは予想できますね。


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問題を起こした会社の社長の会見を見ていると、本当に責任を感じているのかと首をかしげてしまいます。
言葉の端々からは「うちの会社が悪いんじゃない。みんなやってることだ」「ちゃんと厳しい規制さえあればこっちだってこんなことしなかったんだ」といった本音が見え隠れします。
食べ物を提供する者としての発言とは思えませんね。
もちろん、今回の件を受けて規制は強化されると思いますが、規制云々以前にモラルの問題だと思いますね。

また、ビジネスの面で考えても、たしかにユッケは人気商品でそれを安価で出すことでお客さんは集まり、短期的に売上は伸びるかもしれませんが、ひとたび今回のような事件が起きれば店の信用は一瞬で地に落ちます。
店側だってユッケを出すメリットとデメリットをしっかり見つめて、自信を持って安全な食品を出せないのであれば出すべきでないと思います。

また、食べる側も生食するリスクをきちんと知るべきです。
そういったリスクを知った上でも食べたいというのであれば、それは自己責任の領域に入るでしょう。
ただ、子供には食べさせないというのは徹底すべきですね。
店側も子供がいる場合に生肉の注文が入った時はお客さんに一言いうぐらいの配慮があるといいです。
子供は何が危なくて食べてはいけないのかを知りません。
周りにいる大人がしっかりと守るべきです。

僕は栄養学を勉強してからユッケなどの生肉を食べるのをやめましたが、今回の事件で改めて危険性を認識しました。
生肉を食べる場合はきちんと安全が確認できる状況でのみ食べたほうがいいですね。


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●参考
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/anzen_info/nama/index.html
(東京都福祉保健局 食品衛生の窓)